段付きボルトにJIS規格はある?ショルダーボルトの規格範囲と確認項目を解説
段付きボルトを選定するとき、「JIS規格はあるのか」「カタログに近い寸法があれば規格品として扱えるのか」と迷うことがあります。結論からいえば、六角穴付きショルダボルトにはJIS B 1175があり、対応する国際規格としてISO 7379があります。ただし、段付きボルトという呼び方は規格対象より広く、頭部形状や肩部寸法が異なる製品まで含まれます。本記事では、JIS・ISOが対象とする範囲、規格品かどうかを確認する手順、規格外になる主な条件を、設計・購買の実務に沿って整理します。
段付きボルトにはJIS規格がある?
段付きボルトに関係するJIS規格はあります。ただし、対象は「段が付いたボルトのすべて」ではなく、六角穴付きのショルダボルトです。
JIS B 1175が規定するショルダボルト
日本規格協会が公開する2026年版JISハンドブックの収録規格一覧には、JIS B 1175:1988が掲載されています。規格名称は「六角穴付きショルダボルト」です。別の日本規格協会資料では、対応する国際規格としてISO 7379:1983が示され、対応の程度は「MOD」と記載されています。
規格番号に「1988」とあるため、すでに使われていない規格のように見えるかもしれません。しかし、2026年版の収録規格一覧にも掲載されていることから、年号だけで失効したと判断することはできません。設計や購入仕様へ記載する場合は、採用する規格番号と版を明示し、必要に応じて規格本文を確認します。
「段付きボルト」という呼び方が示す範囲
一般に段付きボルトとは、ねじ部とは異なる径の軸部や肩部を備えたボルトを指します。肩部を回転軸、位置決め、案内、間隔保持、荷重受けなどに利用できるため、単なる締結部品とは異なる機能を持たせられます。
一方、JIS B 1175の名称は「六角穴付きショルダボルト」です。つまり、六角穴付き頭部という形状を含めて対象が定められています。六角頭、なべ頭、フランジ付き、十字穴付き、特殊ドライブなど、別の頭部を持つ段付きボルトまで一括して規定する名称ではありません。
したがって、「段付きボルトである」と「JIS B 1175に適合する」は同じ意味ではありません。まず、段付きボルト全体の中に、規格で定められた六角穴付きショルダボルトが含まれると理解すると整理しやすくなります。
JIS B 1175とISO 7379の関係
JIS B 1175とISO 7379には対応関係がありますが、規格番号だけを見て「寸法も要求事項もすべて同じ」と判断するのは避けるべきです。
ISO 7379が対象とする製品
ISOの公式ページによると、ISO 7379:1983の名称は「Hexagon socket head shoulder screws」です。メートル寸法を持つ製品を対象とし、呼び肩径6.5 mmから25 mmまでの範囲、幾何公差、他の国際規格を参照した仕様、呼び方の例を定めています。同規格は2025年に確認され、ISOの公式ページでは現行の国際規格として掲載されています。
この説明からも、ISO 7379は段付き形状全般ではなく、六角穴付き頭部と肩部を持つ特定の製品群を対象としていることが分かります。
JIS・ISO・メーカー仕様を分けて確認する
日本規格協会のハンドブックでは、JIS B 1175:1988に対してISO 7379:1983(MOD)と記載されています。設計・購買では、JIS品、ISO品、メーカーの標準シリーズを同一のものとして扱わず、実際に採用する製品の仕様を照合する必要があります。
| 区分 | 主な位置づけ | 確認すべき点 |
|---|---|---|
| JIS B 1175 | 日本産業規格の六角穴付きショルダボルト | 適用する版、寸法、公差、表示・呼び方 |
| ISO 7379 | 国際規格の六角穴付きショルダースクリュー | 呼び肩径の範囲、幾何公差、参照規格、呼び方 |
| メーカー標準品 | 各メーカーが設定する販売シリーズ | 規格番号、寸法系列、材質、表面処理、在庫条件 |
| 図面指定品 | 使用条件に合わせて寸法や形状を指定する製品 | 肩径、肩長さ、公差、段差部、ねじ、材質、検査要求 |
規格は共通の基準として有効ですが、カタログに「ショルダーボルト」と書かれているだけで、JISまたはISOへの適合を意味するとは限りません。規格適合が必要な案件では、製品表示、仕様書、検査書類などを通じて供給者へ確認します。
ショルダーボルトの規格で確認すべき寸法・仕様
規格品かどうかを確認するとき、ねじ径だけを見ても判断できません。段付きボルトでは、肩部の径と長さが機能に直結するため、頭部からねじ先端までを一組の仕様として確認します。
頭部形状と六角穴
JIS B 1175およびISO 7379が対象とするのは、六角穴付き頭部を持つショルダボルトです。頭部外径、高さ、六角穴の形状・寸法、座面形状が採用品と一致しているかを確認します。頭部が六角、十字穴、トルクス・ヘクサロビュラ、フランジ付きなどであれば、少なくともJIS B 1175という名称の対象品とは形状が異なります。
肩径と肩長さ
肩径は、相手穴とのはめあい、回転や摺動の案内、せん断荷重を受ける断面などに関係します。肩長さは、被締結物の合計厚さ、可動部の幅、必要な隙間、ねじを締め切ったときの座面位置に影響します。
規格表に近い数値であっても、肩径と肩長さの組み合わせが規格系列から外れていれば、規格品としては扱えません。肩部公差や相手穴公差も含め、機能する組み合わせになっているかを見る必要があります。
ねじ径・ピッチ・ねじ部長さ
肩径が同じでも、ねじ径、ピッチ、ねじ部長さが違えば別の仕様です。特に肩部とねじ部の境界では、不完全ねじ部や逃げが生じます。相手側のめねじ深さ、必要なねじのかかり長さ、締付後の突出量を確認しないと、肩部が座面へ当たる前にねじが底付きする、十分なねじ山がかからないといった問題が起こります。
段差部R・逃げ・面取り
肩部からねじ部へ移る段差には、加工方法に応じてRや逃げが設けられます。相手部品の穴入口、面取り、座面と干渉すると、想定した位置まで肩部が入らないことがあります。反対に、Rを小さくしすぎると加工性や応力集中への配慮が必要です。
図面では肩径と肩長さだけでなく、段差部R、逃げ幅、面取り、測定基準となる端面も明確にします。「段の長さ」がどの位置からどの位置までを指すのか、設計側と製造側で基準をそろえることが大切です。
材質・強度・表面処理
同じ寸法でも、材質、強度区分、熱処理、表面処理が違えば、機械的性質や耐食性、締結時の挙動は変わります。寸法規格への適合と、用途に必要な強度・耐食性を満たすことは別の確認事項です。使用環境や荷重条件から材料仕様を決め、必要な検査項目と合わせて購入仕様へ記載します。
規格品か規格外品かを判断する手順
規格品かどうかは、外観が似ているかではなく、適用規格と要求仕様を順番に照合して判断します。実務では、次の4段階に分けると確認漏れを減らせます。
製品形状と規格番号を確認する
最初に、対象品が六角穴付きショルダボルトか、それ以外の段付きボルトかを分けます。次に、図面、カタログ、見積仕様にJIS B 1175、ISO 7379などの規格番号が明記されているかを確認します。
「JIS相当」「ISOタイプ」「ショルダーボルト標準品」といった表現は、適合規格の明示とは限りません。規格適合が契約条件になる場合は、曖昧な呼び方のまま発注しないことが重要です。
寸法の組み合わせと公差を照合する
頭部、肩径、肩長さ、ねじ径、ピッチ、ねじ部長さ、全長を一つずつ照合します。寸法が一致していても、肩径公差、肩長さ公差、幾何公差、ねじ精度などの要求が異なる場合があります。
確認の順番は、機能の基準になる肩部から始めるのが実務的です。肩部が相手穴に入るか、必要な範囲を支持できるかを確認し、その後でねじの締結条件と頭部の収まりを見ます。
材料・表面処理・強度条件を確認する
規格番号だけで、実際に必要な材料仕様がすべて確定するとは限りません。材質、強度区分、熱処理、硬さ、表面処理、耐食要求などを、採用する製品仕様と照合します。
材料変更を伴う場合は、強度だけでなく加工性、電食、使用温度、表面処理との組み合わせも検討対象です。材料名が同じでも、必要な機械的性質や証明内容が異なることがあるため、図面と購入仕様の両方で確認します。
検査書類と適合証明の要否を確認する
検査成績書、材料証明、規格適合証明などが必要な案件では、見積依頼時に書類名と確認項目を明示します。寸法検査ができることと、JIS・ISOへの適合を証明できることは同じではありません。
要求書類を発注後に追加すると、製造・調達先の選び直しが必要になる場合があります。規格番号、必要な検査項目、提出書類、判定基準を発注前にそろえることで、設計と購買の手戻りを防げます。
段付きボルトが規格外になりやすい条件
規格外品とは、品質が低い製品ではありません。用途に合わせて、規格にない寸法や形状、材料条件を指定した段付きボルトです。次のような要求がある場合は、標準的なショルダボルトだけでは対応できない可能性があります。
肩径と肩長さの組み合わせが規格にない
相手部品の幅、可動量、支持位置に合わせて肩長さを決めると、規格系列にない組み合わせになることがあります。肩径も、相手穴や荷重条件を基準にすると、標準系列から外れる場合があります。
このとき、規格品に合わせて機械側の設計を変えるのか、段付きボルトを個別仕様にするのかを比較します。部品単価だけでなく、相手部品の加工、組立性、保守時の調達まで含めて判断します。
肩部に独自の公差や表面性状が必要
位置決めや摺動に肩部を使う場合、相手穴との隙間が機能へ直結します。必要なはめあいから肩径公差を設定すると、標準品の公差では満たせないことがあります。表面粗さ、真円度、円筒度、同軸度などが必要な場合も、測定方法と基準を図面で明確にします。
ただし、公差を厳しくするほどよいわけではありません。必要以上に狭い公差は加工・測定・選別の負担を増やします。肩部が果たす役割と相手部品の精度から、必要な範囲を決めることが大切です。
段差部Rや逃げ形状を変更したい
相手部品の面取りと干渉する場合、段差部のRや逃げを調整する必要があります。ピン角に近い形状が必要な場合は、圧造だけでなく二次加工を組み合わせる方法も検討対象です。
太陽精工の段付きボルト製品ページでは、圧造加工ではRが付くものの、二次加工の切削によって角を立たせる方法が案内されています。形状を指定するときは、必要な機能と許容できるRを先に伝えることで、工法を検討しやすくなります。
頭部・材質・ねじ仕様が異なる
六角穴以外の駆動形状、低頭・フランジ付きなどの頭部、特殊材質や表面処理、細目ねじ、短いねじ部なども規格外になる要因です。複数の変更を一つの部品へ集約すると、段付きボルトというより機能部品として設計する必要があります。
だからこそ、規格外品では「規格表にない寸法」を示すだけでなく、なぜその形状が必要なのかを製造側へ伝えることが有効です。目的が分かれば、形状や工法を変えながら同じ機能を満たす提案につなげられます。
規格外の段付きボルトを相談する前に整理したい情報
規格外の段付きボルトは、図面と使用条件をセットで整理すると、製作可否や工法を確認しやすくなります。問い合わせ前に、少なくとも次の項目を確認してください。
| 確認項目 | 具体的に伝える内容 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 全体形状 | 頭部、肩部、ねじ部、先端、穴、フランジの有無 | 対象規格と製造工程を分けるため |
| 肩部 | 肩径、肩長さ、公差、表面粗さ、測定基準 | はめあい、案内、荷重受けの機能を確認するため |
| 段差部 | R、逃げ、面取り、相手部品の干渉条件 | 組付け時の浮きや干渉を防ぐため |
| ねじ部 | ねじ径、ピッチ、長さ、精度、かかり長さ | 締結と底付きの条件を確認するため |
| 使用条件 | 用途、荷重方向、回転・摺動の有無、使用環境 | 必要な材料・強度・公差を整理するため |
| 材料・処理 | 材質、熱処理、表面処理、耐食要求 | 機械的性質と環境条件を確認するため |
| 調達条件 | 試作・量産の別、必要数量、希望時期 | 適した工法と供給方法を検討するため |
| 品質要求 | 検査項目、判定基準、必要書類 | 対応可能な検査・証明範囲を確認するため |
太陽精工の公式サイトでは、特殊段付きボルトについて、金型設計からカスタマイズ、試作から量産までの相談を受け付けています。冷間圧造だけで成立しない形状については、二次加工や協力工場のネットワークを含めて工法を検討しています。
ただし、当社はJIS B 1175適合品の標準供給、ISO 7379適合品の製造・検査証明、JIS規格品の在庫販売、規格対応品としての標準ロット・納期・価格の提示、JIS・ISO適合を保証する検査には対応していません。規格品の購入先を案内するページではなく、規格外を含む個別仕様の整理と製作相談を目的としています。
段付きボルトの規格に関するよくある質問
段付きボルトにはJIS規格がありますか?
六角穴付きショルダボルトにはJIS B 1175があります。ただし、段付きボルト全般を対象とする規格ではありません。
JIS B 1175とISO 7379は同じ規格ですか?
対応関係はありますが、JSA資料ではMODと記載されています。採用品の寸法・要求事項を個別に照合してください。
規格に近い寸法なら規格品として扱えますか?
近いだけでは規格品とは判断できません。形状、寸法、公差、材料、表示、証明条件を確認します。
太陽精工ではJIS規格品を在庫販売していますか?
JIS規格品の在庫販売や適合品の標準供給には対応していません。個別仕様の段付きボルトをご相談ください。
段付きボルトの仕様検討は図面と使用条件をそろえてご相談ください
段付きボルトは、ねじ径が合うだけでは機能を判断できません。肩径・肩長さ・公差・段差部R・ねじ部・材質を、相手部品と用途に合わせて整理する必要があります。
規格品では収まらない肩部寸法、短いねじ部、特殊な頭部、段差部の干渉などでお困りの場合は、図面、用途、数量、必要な品質条件をそろえてご相談ください。太陽精工では、段付きボルトの製品ページとお問い合わせ窓口で個別仕様のご相談を受け付けています。


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