【ネジ設計】有効ネジ部の長さ(かかり代)と締結トルクの関係を解説!

ネジが折れないために、またネジ山がせん断・破断しないためには、有効ネジ部の長さ(かかり代)や呼び径(d)、締結トルクの関係が重要になります。
ネジを破損させないためにも、設計担当者はネジ材質から締結箇所や用途に合わせて、有効ネジ部の長さ(かかり代)、呼び径(d)、締結トルクを決定する必要があります。
今回の記事ではそのようなネジの強度に関する、技術的な情報を詳しく発信いたします。
有効ネジ部の長さ(かかり代)と締結トルクの関係とは
ネジの有効ネジ部の長さ(かかり代)と締結トルクの関係を紹介する前に、そもそもネジの強度や耐久性を示す重要な指標である「ネジ強度区分」の概要を簡単に説明します。
強度区分とは、言葉の通りネジ・ボルトの強度や耐久性を示しております。強度区分を決定する上で、念頭においておきたいことが以下の3点です。
1. 強度区分はネジの強度・耐久性を示す
2. 使用する箇所・用途・目的により求められる強度が異なる
3. 鋼材の種類・製造方法・熱処理方法によっても強度区分は変わる
例えば鋼製のネジの強度ネジの強度区分は、
[3.6]、[4.6]、[4.8]、[5.6]、[5.8]、[6.8]、[8.8]、[9.8]、[10.9]、[12.9]
の10段階に分かれています。記載されている数値のうち、左側の数値は引張強さを示し、右側の数値は引張強さに対する荷重につき、何%が降伏点にあたるかを示しています。
ネジが折れないために、またネジ山がせん断・破断しないためには、このネジ強度区分を踏まえたうえで、最適な有効ネジ部の長さ(かかり代)締結トルクを考える必要があります。それでは、次に有効ネジ部の長さ(かかり代)締結トルクの関係について解説します。
➊有効ネジ部の長さ(かかり代)が短い場合
締付けるネジの有効ネジ部の長さ(かかり代)が短い場合、図のように必要なトルクで締付ける前にネジ山が破損する(せん断・破断される)場合があります。
※せん断:はさみのように切断されること ※破断:引きちぎるように切れること
➋有効ネジ部の長さ(かかり代)が長い場合
締付ける有効ネジ部の長さ(かかり代)が十分ある場合、適切なトルクで締結を行えば問題はなく締結が可能ですが、必要以上のトルクで締付けてしまうと、ネジ谷部で破損(ネジ部が引張荷重により破断)してしまいます。
このように、ネジ山が破損する(せん断・破断される)場合は、有効ネジ部の長さ(かかり代)に原因があり、またネジ谷部で破損(ねじ部が引張荷重により破断)する場合は、締結トルクに原因があります。
このように、ネジ部引張荷重により破断しない範囲でのトルクを決定することがまずは重要です。その上で、引張強さよりもねじ山せん断・破断強さを強くすることでねじ山せん断破損は防ぐことができます。
そして、ねじ山せん断・破断強さを強くするためには有効ネジ部の長さ(かかり代)を十分に確保することが重要です。
ネジが破損しない有効ネジ部の長さ(かかり代)の求め方

次に、ネジが破損しない有効ネジ部の長さ(かかり代)の求め方について具体的に解説を行います。
例えば、せん断強さを引張強さの60%として算出すると、M20以下の場合、有効ネジ部の長さ(かかり代)が2山(1ピッチ)前後または呼び径(d)の0.4倍弱で引張強度とネジ山せん断強度が同等になります。
例:M2.5なら1.7山以上 または 0.34d以上。M10ならば2.5山以上 または 0.37d以上
ただ安全率・形状・締付け環境などにより変化することを考えれば、呼び径(d)以上の長さであることが好ましいです。
例:M2.5なら2.5㎜以上、M10ならば10㎜以上
実物評価を行うことが確実ですが、有効ネジ部の長さ(かかり代) ≧ ねじの呼び径(d)が設計時では目安になります。
破損しないネジをお探しなら特殊ネジ カスタム部品製造.comにお任せ!
今回ご紹介したように、ネジの破損には、有効ネジ部の長さ(かかり代)あるいは締付トルクといった原因があります。特殊ネジ カスタム部品製造.comでは、お客様の求めるネジ形状や材質、締結箇所や用途に合わせて、有効ネジ部の長さ(かかり代)、呼び径(d)、締結トルクを提案させて頂きます。
特殊ネジ カスタム部品製造.comの主な特徴をご紹介します。
①お客様の製品に合わせた最適な有効ネジ部の長さ(かかり代)のご提案が可能!
特殊ネジ カスタム部品製造.comでは、お客様が求める製品形状や締付トルクから、最適な有効ネジ部の長さ(かかり代)をご提案の上、製造が可能です。基本的なネジであれば、強度計算も簡単ですが、計算の難しい異形状のネジについても当社の目利き力で最適なご提案をさせていただきます。
②軽量かつ強度と耐久性が必要なネジ・ボルトの製作もお任せ!
軽量かつ高強度で耐久性のあるネジ・ボルトが欲しいというニーズが近年増えております。特殊ネジ カスタム部品製造.comでは、特にアルミネジ・ボルトのニーズが高まっており、これまでに数多くお客様の軽量化の目的に合わせた最適なアルミネジ・ボルトのご提案、製造を行ってきました。軽量化について多くのノウハウをもっており、下記記事でも詳しく解説しております。
また実際、鉄材の旧製品からアルミ製の新製品に切り替わったことで、約60%の軽量化を実現・成功させることができた事例もございます。
>>技術提案事例「鉄材部品⇒アルミへの材質変更で60%の軽量化」
このように当社は、アルミネジ・ボルトの製作実績が多数ございます。お客様の求める強度区分のアルミネジ・ボルトの製作が可能です。
③不完全ネジ部も転造で製造!
破損しないネジを製作するためには、有効ネジ部の長さ(かかり代)が重要ですが、不完全ネジ部によるネジ破損にも注意が必要です。不完全ネジ部があることによって、頭部が浮き上がってしまい、完全に締結できないという事象が発生し、無理に締結すると破損する危険性があります。
そんな不完全ネジ部ですが、一般的には切削加工でヌスミ加工を行い削除します。ただ、当社においては、不完全ネジ部を最小化するために二次切削を入れることなく転造加工のみに絞り、不完全ネジ部を半ピッチ以下に抑えた製品実績があります。転造により不完全ネジ部を削減することで、切削の二次加工を入れずに済むというメリットが生まれます。二次加工を行わないため、製品コスト減少に繋がり、お客様に対してのコストメリットを生み出すことができます。
耐久性のある軽量アルミボルトの製作事例紹介
続いて、実際に当社が製作した耐久性のある軽量アルミボルトの製品事例をご紹介します。

アルミ製 貫通穴特殊ボルト
こちらの製品は、モビリティ業界向けの貫通穴特殊ボルトです。写真でもわかる通り、天面から貫通穴が空いている製品です。
お客様の大きなご要望として、軽量化がありました。そこで当社では、類似品でステンレスを使用していたこともあり、アルミを提案させていただききました。また貫通穴をあけることにより・・・

ヘクサアルミボルト(M6×P0.75)
こちらの製品特徴としては、従来は鉄材で使用されていた製品を提案し軽量化に成功した製品です。本製品の本来の使用用途・必要硬度を加味したうえでアルミを提案させて頂きました。アルミに変更するにあたっての課題である硬度ですが、HRB85~110での硬度実績がありますので・・・

十字穴溝入れボルト(M4×P0.7)
モビリティ向けのアルミ製すり割り溝入れボルトです。すり割り形状は、当社では圧造で加工しています。一般的にすり割り形状の製品は別工程で加工することが多くなります。しかし当社では、冷間圧造で加工しているため、品質の安定度が高まっております。
近年はすり割り形状の要望が少なくなっているため・・・
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