不完全ネジ部とは?
不完全ネジ部とは?
転造工程でパーツフィーダーからブランクが流れてきて転造ダイスに揉まれてねじ山が立ちます。その際に一番最初の食いつき部分というのが山がきちんと立たないため、ねじ山の形が不完全なねじ部ができてしまいます。これを不完全ネジ部といいます。切削加工でのネジ切も同様に工具の面取り部であったりが不完全ネジ部となります。つまり、不完全ネジ部は山がきれいに立っていないということです。
ネジを締めるときは不完全ネジ部に注意しないと「不完全なネジ締め」となります。なぜなら、不完全ネジ部があることによって、頭部が浮き上がってしまい、完全に締結できないという事象が起きるからです。そのために、不完全ネジ部を短くすることで浮きを抑えることが必要となります。
不完全ネジ部を最小化する方法とは?
不完全ねじ山部を少なくするためには切削加工でヌスミ加工を行うことが一般的です。転造加工においては各社特殊なノウハウを持って、不完全ネジ部の最小化に取り組んでいるため、一概にどの方法が正しいのかという所は記載するにあたって難しい所があります。ただ、当社においては、不完全ネジ部を最小化するために二次切削を入れることなく転造加工のみに絞り、不完全ネジ部を半ピッチ以下に抑えた製品実績があります。転造により不完全ネジ部を削減することで、切削の二次加工を入れずに済むというメリットが生まれます。二次加工を行わないため、製品コスト減少に繋がり、お客様に対してのコストメリットを生み出すことができます。
不完全ネジ部の寸法を測定する方法
不完全ネジ部の寸法を測定する方法として、以下が挙げられます。
① ネジリングゲージ+(シックネスゲージorノギスor画像測定機)
ネジリングゲージには面取りがされているのが一般的ですので、面取りの深さ分(おおよそ0.5~1P分)、シックネス(他も同じ)での隙間が狭くなります。面無しのネジリングゲージ(特注)を用意し測定するのが確実ですが、面取部分の深さを計算し、シックネスゲージの厚さにプラスして算出する方法もあります。精度的には面無しネジリングゲージ+シックネスが一番高いので、規格に対する実力値が厳しい製品等ではこの方法を用いるのが一般的かと思います。もっとざっくりにやると、おおよその面取り深さ分ネジリングゲージを緩めて(P1.0なら1回転で1㎜戻る)、シックネス等で隙間を測定するという方法もありますが、リングゲージにガタつきが出る事もあり、あまり正確な方法ではなく、余裕をもってクリアできる製品でない限りこれはあまり推奨できる方法ではありません。
② 画像測定機(投影機、IM)
座面(端面)~完全ネジ山のトップロールの距離を測定します。製品を回転させながら、測定箇所を選定し、目視で位置合わせを行って測定を行いますので、イメージよりは不正確な測定方法になります。(足先側切り下げ部の不完全ネジ長さ等では多く測定する方法です)
不完全ネジ部の技術提案事例紹介
続いて、実際に当社が提案した不完全ネジ部の事例です。
課題:短寸ネジの不完全ネジ部を限りなくゼロにしたい…。
既存のお客様より、短寸ネジの不完全ネジ部を小さくすることができないかとのことで、ご相談がありました。お客様は、不完全ネジを限りなくゼロにすることで、相手物と締結した際にネジが浮かないようにしたいとのことで、弊社の技術力や目利き力に期待いただき、お声掛けをいただきました。そこで、不完全ネジを限りなくゼロにするために当社では・・・
不完全ネジ部の事例紹介
続いて、実際に当社が製作した不完全ネジ部の製品事例紹介です。
フランジ付短寸ボルト
本製品の特長といたしましては、首下不完全ねじ部が短いことがポイントです。十字穴に対して軸の同心度をお客様からの要望を頂いたため、切削後の偏心確認を行っています。こちらの製品はネジ部が極端に短いため、もみ切り転造にて加工することで安定した良品供給が可能になっております。表面処理においても外観・製品寸法・耐食性を損ねないSSブラックを採用しています。
アースねじ(M4*P0.7)
真鍮で作られており、軸が短いことが特徴です。お客様からの要望により、不完全ねじ部を極力短くしてほしいとのことでした。そのため当社では、不完全ねじ部をほぼ無しで成形いたしました。不完全ねじ部を極力なくすため、これまで蓄積してきた転造技術ノウハウを活かすことで、お客様のご要望に対して妥協することなく対応しています。
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